Contents
あの日の「ビッ!」は、たぶん祝砲だった。
5年前に高松へ移住してきたときに買ったスーツ。
久しぶりに袖を通して、ボタンを閉めようと腕を曲げた瞬間、空気を切るような音がした。
「ビッ!」。
うぅ、キツイな……と思った次の一秒で、上腕三頭筋あたり──後袖の縫い目(袖の後ろの縦ライン)が裂けた。
心のどこかでは、ほんの少し予感していたのだと思う。
この5年で、上半身はすっかり“新しい自分”になっていた。筋トレで肩と胸が育ち、禁煙で体重も増えた。
スーツは、5年前のまま。ぼくは、5年前のままじゃない。

「たまに着る用」だからこそ、いま整えておく。
とはいえ、今のところスーツは毎日着るわけじゃない。
けれど、たまに「きちんと」の出番がやってくる。
そういうときに限って、クローゼットの前で右往左往してしまう。
つまりこれは、スーツを買い替えるタイミングのひとつでもある。
だから、いま整えておくことにした。“保険”みたいな一着を。
店員さんのうなずきがサイズアップの合図だった。
お店で事情を話すと、メジャーを当てながら店員さんが小さくうなずく。
「お客様の上半身だと、こちらですねぇ…」
やっぱりそうか。サイズは上げて、念のためのストレッチ素材。
袖を軽く曲げても、あの“突っ張る感じ”がこない。鏡の中で、肩が静かに収まっている。
スーツは、体型に合わせてサイズアップすることで動きやすさが格段に違う。
特にストレッチ素材を選べば、腕を曲げたり背中を伸ばしたりする動作に余裕が出る。
「次は破けない」──そんな安心感がある。
ついでにYシャツも店員さんに選んでもらった。
首まわりと肩に合うものを基準にすると、やはりサイズアップになる。
首・肩・胸はちょうどいい。けれど、そのぶん胴体はブカブカで、袖も少し長い。
「筋トレや体型変化で上半身が大きくなると、シャツも自然とサイズアップしていくんだな」と実感した。
在庫はラスト1着。まるで“新しい自分”を待っていたかのようで、少しうれしくなった。
破れたほうのスーツは、そっと眠らせる。
応急処置は、あえてしなかった。
成長した体には、もうこのスーツは追いつけないだろうから。
破けたのは上腕三頭筋あたりの後袖の縫い目。
スーツの袖や縫い目が破けたときは、リフォーム店で直す方法もある。数百円から1,000円前後で修理できることもあるし、生地が裂けてしまっても当て布で直すことができる。
けれど、今回はもう役目を終えた気がした。ぼくにとっては「スーツを買い替えるタイミング」だったのだ。
厚手のハンガーに掛け替えて、不織布のカバーをかける。
「数えるほどしか着なかったけれど…」と小さくつぶやいて、クローゼットの端っこへ。
破れたスーツは処分するかもしれないし、記念のようにしばらく残しておくかもしれない。
“前のままじゃない自分”に、新しい一着を。
新しいスーツに腕を通す。
肩線が合うだけで、こんなに気持ちが軽いのかと驚く。
胸板のふくらみも、背中の広がりも、もう無理に収めなくていい。
鏡の中の自分が、少しだけ勇ましく見えた。
あの「ビッ!」は、たぶん祝砲。
スーツの縫い目が弾けた音は、5年分のアップデートが顔を出した合図だった。
これからは、新しいサイズで、ちゃんと歩いていこう。
スーツが破けたとき、みんなが気になること。
👔
「破けたところから、成長がのぞく。
そのちいさな穴を、今日はちょっと誇らしく思ってみる。」
👔 なんだか気になる、っていうのは、たぶん「ちょっと、いいかも」ってことです。
『ストレッチ素材のスーツ』のこと、もうちょっと知りたい人はこちら。
こんなのもあってね。うん、あるんです。
nufufu.com | |
Related Searches | |
✅代行サービス専門マッチングサイト:ラクダ
✅ラクダではアフィリエイトパートナーを募集しております。
🏠無料で空き家を掲載・検索できるマッチングサイト:空き家リスト
✨当サイト:ぬふふ.com
🏢運営会社:合同会社桔梗企画