妻の「行ってみたい」から始まった午前中

妻の「皇居ランの後、泉岳寺に行ってみたい」という一言で、
その日の行き先が決まった。

泉岳寺と言えば、忠臣蔵。
忠臣蔵のことは、ぼくはそんなに詳しくない。

でも、知らない場所を歩くのは好きだし、
なんとなく、時期的に泉岳寺がちょうどいい気がした。

高輪ゲートウェイ駅を出て、ゆっくりと坂を登っていく。
冬の光はやわらかくて、
その下を歩いているだけで、気持ちがすこしほぐれていく。

「さぁ、もうすぐ泉岳寺ですよ〜」なんて、ロケ気分でしゃべりながら歩く午前中。
向かっているだけで、気持ちがすこし明るくなる。

泉岳寺の中門妻の『行ってみたい』に連れられて、泉岳寺の中門へ。

義士祭の特別公開へ誘われる

山門が見えてくると、
そこだけ時間の速度がゆっくりになるようだった。
静けさと、人の営みと、お祭りの準備と。
いくつもの雰囲気がひとつの場所になって重なっていた。

泉岳寺の山門泉岳寺の山門は、静けさとお祭りの気配がいっしょに立っていた。

境内に足を踏み入れたあたりで、
プラカードを持ったおじさんと、
チラシを手にしたおばさんに声をかけられた。

「今日は義士祭ですよ。
 12月12日から14日まで、
 大石内蔵助が切腹した場所を特別公開してます。
 ぜひ見ていってください!」

そんなふうに言われたら、
ぼくたちは自然と「おぉ、それはいいね」となる。

そこから10分ほど歩いて、
ふだんは閉ざされている一角へ向かった。

塀に囲まれたその場所は、
空気がすこし違っていた。
樹木が濃く、光が入りにくい。
静けさの奥に、何かがそっと潜んでいるような気配がある。

係員の方は淡々と説明してくれた。
必要以上に盛ることのない語り口が、
この場所にはちょうどよかった。

“歴史に触れた”というより、
そこに流れる空気を受け取ったような時間だった。

大石内蔵助が切腹した場所大石内蔵助が切腹したと言われる場所。特別公開の日だけ、そっと姿を見せる。
大石内蔵助が切腹した場所に置いてあった絵大石内蔵助たちの最期を描いた絵。入口にひっそりと、置かれていた。

義士祭の初日の境内を歩く

泉岳寺へ戻ると、
境内にふわっとお祭りの香りが漂っていた。
屋台が並び、湯気と声と色が混ざり合っている。

泉岳寺の境内 お祭り準備中泉岳寺の境内は、お祭りの準備でそわそわしていた。

ぼくらが訪れたのは12月12日。
義士祭の初日で、人はまだ少なめだった。

お土産屋さんのおばちゃんが、
「14日になるとね、2万人くらい来るんだよ」
と、どこか楽しそうに教えてくれた。

泉岳寺はそんなに広くない。
そこへ2万人が集まるというから、驚くよね。
今日のように余白があるほうが、
ぼくらにはちょうどよかった。

泉岳寺の本堂本堂の前に立つと、今日の賑わいと昔の気配が、どこかで同居していた。

赤穂浪士たちのお墓へ向かう

赤穂浪士たちのお墓へ向かう道は、
ほんの短い石畳と石段なのに、
歩くほどに気持ちがすっと静かになっていく。

赤穂浪士たちのお墓へ赤穂浪士たちのお墓へ。ここを歩くときだけ、足音がすこし静かになる。

脇には血染めの石や梅の木、
首洗い井戸などが点在していて、
そのたびに「あぁ、いろいろあったんだな」と思いながら、
自然と足がゆっくりになる。

血染めの梅・血染めの石血染めの梅・血染めの石、と呼ばれる場所。でも、いまはただ陽にあたっているだけだった。
首洗い井戸首洗い井戸と伝わる一角。時間だけが静かに積もっていた。

受付で300円を支払うと、
半分に切った竹筒に線香がぎゅっと90本ほど載ったものを手渡される。
それを持って、義士たちに線香を手向けていく。

お墓に近づくと、
線香の煙が一気に押し寄せてきて、
目の前が少し霞むほどだった。
香りが“祈りそのもの”のように空気に満ちている。

赤穂浪士たちのお墓赤穂浪士たちのお墓。煙と光が重なって、時代の境目みたいに見えた。

それぞれの墓碑には自害した年齢が書かれていて、
その若さに気づいた途端、胸の奥がひゅっとした。

気づけば線香が足りなくなっていて、
「あ、いかんいかん……」と思う。
全員に手向けられなかったことを、
小さく心の中で謝った。

赤穂浪士たちの墓所の配置図赤穂浪士たちのお墓。名前がずらりと並ぶ。ひとつひとつに物語がある。

赤穂義士記念館で感じた、静かな時間

墓参りを終えて、
そのまま赤穂義士記念館へ向かった。

入場料は500円。
建物はこぢんまりしているけれど、
中へ一歩入っただけで、空気の温度が変わったようだった。
薄暗さと静けさが重なって、
そこにいるだけで、呼吸がゆっくりになる。

館内は撮影禁止。

書状や刀、
当時の生活に触れられる資料が並んでいて、
忠臣蔵に詳しくないぼくでも、
思わず「おぉ……」と声が漏れた。

知識というより、
“人が生きていた時間” にそっと手を触れたような感覚だった。
展示を見終えるころには、
胸のあたりがじんわり温かかった。

境内の屋台で、討ち入りそばをすする

かなり歩いたこともあって、
ぼくも妻もそろそろ座りたくなる。
妻にいたっては、早朝に皇居ランまでしているのだから、なおさらだ。

境内を歩きながら、
「あたたかいもの、食べたいね」と同時に口にした。

そこで目に入ったのが、屋台の“討ち入りそば”。

600円のそばに、煮玉子をつけるとプラス100円。
山菜もしっかり味があって、
煮玉子の塩加減もちょうどよかった。
体の中心にふわっと温かさが戻ってくる。

食べながら妻が言う。
「うちの実家ではね、討ち入りの日にはそばを食べるんだよ。」

あぁ、そういう習わしがあるんだ。
いま食べている一杯が、
急にすこしだけ特別なものに思えた。

泉岳寺の討ち入りそば討ち入りそばをすする。歴史のことはよく知らなくても、あたたかさだけはすぐ分かる。

かすかに残る“息づかい”を感じながら

ぼくは忠臣蔵に詳しいわけではない。
でも今日歩いた時間の中には、
当時を生きた人たちの息づかいが
かすかに残っていたように思う。

そんな泉岳寺の一日だった。

🔔
「知らないことの中にも、
ちゃんと心が動く瞬間があるんだなぁ。
今日はそんなことを思いました。」

よくある質問(Q&A)

泉岳寺の義士祭はいつ開催されますか?
毎年12月12日〜14日の3日間で開催されます。
特に14日は「忠臣蔵 赤穂義士行列」が行われ、来場者が多く賑わいます。

また、4月には「春の義士祭」も開催されています。

赤穂浪士のお墓では線香をあげられますか?
はい、あげられます。
受付で300円を支払うと、半分に切った竹筒に約90本の線香が載ったものを手渡されます。
それを持って、義士たちのお墓に手向けていきます。
赤穂義士記念館は撮影できますか?
館内は撮影禁止です。
書状や刀、生活資料などが展示されており、静かに見学する雰囲気です。
義士祭の日は混雑しますか?
はい、とくに12月14日の「忠臣蔵 赤穂義士行列」は混雑します。
ゆっくり巡りたい場合は、比較的落ち着いている12日〜13日がおすすめです。
泉岳寺で食事はできますか?
義士祭の期間中は屋台が出て、「討ち入りそば」などが提供されます。
通常時は境内に飲食の提供はありません。

📍 泉岳寺へのアクセス

こういうの、持ってると案外いいんです。

こんなのもあってね。うん、あるんです。

ABOUT ME
ぬふふ.com
【合同会社桔梗企画:代表】 家族の中心にいるのは、アビシニアンの“アビ蔵”。 そのアビ蔵の『たそがれタイム』に、そっと寄り添う妻。 そして、ぼく。三人暮らし、みたいなものです。 今日もなんとなく、いい日を過ごしています。 書いているのは、猫のことだったり、 ちょっといい物のことだったり、 気がつけばおいしいものの話だったり。 なんの役にも立たない日もあります。 でも、「なんか、好きだな」って思えることを、 すこしずつ集めて、生きてるような気がしています。 最近、「nufufu.com」のドメインを取得しました。 以前までの「ぬふふ.com」の人とは別人です。
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