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🏝 曇り空のフェリーで、旅がはじまる日。
「日曜日に瀬戸芸(瀬戸内国際芸術祭)を観に行こう。小豆島がいいな。」と妻が言った。
その時点で、日曜日の天気予報はイマイチ。
雨なら行くのはやめよう、という約束をしておいた。
つまり、行くかどうかも“天気まかせ”の旅だった。
でも、そんなあやうさも、どこか気楽でいい。
晴れたら行こう。 雨ならまた今度。
それくらいの気持ちが、いちばん遠くへ連れていってくれる。
そして日曜日の朝、雨は降らなかった。
曇り空の向こうに、少しだけ光が見えていた。
🎫 フェリーの切符を買って、旅が動き出す。
朝の空気は、しっとりしていた。
小雨が降るでもなく、ただ、空気に水の気配が混じっている。
連絡通路を通り、フェリーの切符売り場と乗り場へ向かう。
チケットカウンターの前には、外国人観光客も多く、
直島や小豆島行きの便を待つ列ができていた。
自動販売機で「小豆島・池田港行き」の切符を買う。
手にした小さな紙片には、
“旅のスタートライン”みたいな重みがあった。

🚢 フェリーの中で、ゆっくりと始まる時間。
船に乗り込むと、そこそこ乗客がいた。
混んではいないが、空席がほどよく埋まっていて、
それぞれの人が、静かに“自分の旅”をしている感じだった。
船内には小さな売店があり、うどんやラーメンが並んでいる。
ただ、おばさんがワンオペで切り盛りしているので、
注文すると出来上がりまでけっこう時間がかかる。
ぼくたちはホットコーヒーを頼んだが、
湯気が立ちのぼるまで、しばらく待つことになった。
──まぁ、ワンオペだから仕方ないよね。
フェリーの時間は、港よりもゆっくり流れている。
ぼくは初めてのフェリーに、
子どものように窓の外を眺めていた。
島々が灰色の海に浮かんで、
まるで“止まった地図”のように見えた。
妻はといえば、もう何度もこの海を渡っているので、
物珍しさもなく、本を開いて静かに読んでいた。
その静けさが、逆にこの旅のリズムを作っていた。

🌊 小一時間の海をわたって。
船はすでに、静かに海の上を進んでいた。
灰色の水面を切る音が、
ときどき船体にふれて小さく跳ね返ってくる。
窓の外には、ところどころ島の影が浮かんで見える。
波がゆるく、水平線をほどいていく。
コーヒーの湯気がまだ消えないうちに、
空の色がすこし変わった。
雲の切れ間から、白い光が差して、
遠くの海面を一瞬だけ照らした。
妻は本を閉じて、
「もうすぐ着くね」と小さく言った。
ぼくはうなずきながら、
その光がどこかへ逃げないうちに、
目で追っていた。


🏝 小豆島に着いてから。
船内アナウンスが流れた。
「まもなく小豆島・池田港に到着します」──そんな内容だったと思う。
ざわめきが少しだけ増え、
人の気配が“旅の終わり”から“島のはじまり”へと変わっていく。
窓の外に視線をやると、
灰色の海の向こうに、うっすらと山の稜線が見えた。
フェリーの速度が落ち、
エンジンの音が静かになる。

船を降りると、潮の匂いがまた強くなった。
空はまだ曇りのまま。
でも、空気がどこかやわらかくなっている。
それだけで、島に着いたことがわかった。
港のターミナルには、
「瀬戸内国際芸術祭」ののぼりがゆらいでいる。
人の流れに合わせて桟橋を歩き、
建物の中へ入ると、土の匂いがまじった風がふっと通り抜けた。
目的地は決まっていた。
次のバスまで少し時間があることも知っていた。
妻はベンチに腰を下ろし、
静かに周囲を見渡していた。
ぼくは、さっき船内で飲み切ったコーヒーの味を思い出していた。
なんとなく、ディスカウントストア「ラ・ムー」で売っている“エンペラーコーヒー”に似ていた。
そんな味だった。
つづく。

よくある質問(FAQ)
フェリーでおよそ60分ほどです。航路によって多少前後しますが、ゆったりとした瀬戸内の風景を楽しむにはちょうどいい時間です。
はい。売店があり、うどんやラーメン、コーヒーなどを注文できます。ワンオペ営業のため、混雑時は少し時間がかかることもあります。
港から各エリアへは路線バスが運行しています。便数は多くないので、事前に時刻表を確認しておくと安心です。
こんなのもあってね。うん、あるんです。
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